しかし、人間が一度手を入れた、生活圏にある林(いわゆる里山)は、人間の責任で管理しなければなりません。
管理の悪いまま放置すると、下草が生い茂り、ツタがからまる薄暗い荒れたジャングルになってしまい、樹木は健康に育ちません(いっそ数百年放置すれば原生林に戻るかもしれませんが)。
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薪は人間の努力で製造できる、理想的な再生可能エネルギーです。
一度伐った木は、二度と元には戻らない、木を伐ることは全て自然破壊だ、と考えている人がよくいらっしゃいます。しかも、自然保護が大切だと考える人の中にも、意外と多いようです。
ここでまず大切なのは、原生林と人間が手を入れた林を分けて考え、さらに自然林(主に広葉樹林=雑木林)と人工林(主に植林された針葉樹林)を分けて考えることです。
太古の昔から人間の手の入っていない原生林を伐採してもいいと考える人は、もちろん問題です。そこには、完成された自然のサイクルと、膨大な遺伝子のプールがあるからです。人間はそっと覗かせてもらうだけにすべきです。
しかし、人間が一度手を入れた、生活圏にある林(いわゆる里山)は、人間の責任で管理しなければなりません。
管理の悪いまま放置すると、下草が生い茂り、ツタがからまる薄暗い荒れたジャングルになってしまい、樹木は健康に育ちません(いっそ数百年放置すれば原生林に戻るかもしれませんが)。
実はこうした林は、野生動物にとっても住みにくい環境です。
近年、都市に野生動物が出没しているのは、緩衝地帯であった里山と原生林との境がなくなってしまったことにも一因があると思います。
このように一度手をいれた以上、人間の責任で健康な林に育てる必要がありますが、その際、針葉樹と広葉樹では、まったく異なった作業が要求されます。
針葉樹の場合、本来、実生(実が落ちて芽が出る)で育つのが普通ですが、人間がスギやマツを育てる場合、別に栽培した苗を植林します。
私たちは、現在日本のスギの成長量が年間1億立方もあることから、今世紀中は皆伐〜植林ではなく、徹底的な間伐を行うべきだと考えています。
※日本の薪ストーブユーザーには強いナラ・カシ信仰があり、スギやマツなど薪にならないと考えている方がいらっしゃいますが、よく乾燥させれば、比重が軽いため火持ちは劣りますが、火付きが良く火力の強い薪になります。
現在、主に森林組合などが国の補助金で間伐をする場合、その場に切り捨てて材木としては利用しないことが常態化しています。この場合、林内の環境は確かに良くなり、残った木の成長を促進する効果は大きいですが、切り倒された木からはCO2の20倍の温室効果を持つといわれるメタンガスが発生し、かえって温暖化の要因を増やしていると指摘されています。人間が伐った木は、人間の手で林外に運び出し、有効に活用すべきなのです。
ただ、林外に搬出するべき間伐材の量が薪の必要量より2ケタ多いため、私たちはこれを民生用ではなく、発電用の燃料へと、国策によって利用をはかるべきだと考えます。
詳しくはハラカタヴァルトのHP参照。
一方、広葉樹の場合、もちろん実生でもふえますが、それよりも根っ子さえ傷めなければ、切株から次世代の芽が出て、たちまち再生していきます。
こうした広葉樹の営みを「萌芽更新」といい、それによってできる林を2次林といいます。
一定面積の広葉樹林を皆伐すると、放っておけば300齢位で順次倒れていく木々を一斉に切り揃える形となり、以後林が均等に再生していきますが、こうした林、2次林は、30齢くらいまでの若いうちが特に成長度が大きいのです。
つまり若い広葉樹林の再生力を利用し、明るく健康な林を育てることが、「地球温暖化と薪」の項に書いたCO2の固定を促進する作業にもなります。
現在、広葉樹の利用法としてもっとも需要の大きいパルプ用材には樹齢が関係なく、コストの削減のためにひたすら大面積の伐採を指向します。
10歳だろうが100歳だろうが、重機の投入で、何10haに渡って無差別に伐ります。この際、土壌を傷め、赤土がむき出しになってしまえば、もう数100年程度では回復しません。
また、日本海側を中心にナラ枯れ病の深刻な被害が広がっていますが、菌を媒介するカシノナガキクイムシは大好きな70齢以上の老木を探しながら、一生で700mほど移動します。
そうしてみると、里山の30年から40年の広葉樹を選んで伐採する薪作りは、身近な里山の環境を守るだけではなく、原生林と町との緩衝帯を確保することで、日本全体の環境や生態系を守る上からも、病害虫防除の上からも、理想的な林業であると言えると思います。
伐った木は、用材として利用するならその気の樹齢以上の年月の使用をできれば炭素固定の効果が十分にあります。
もっとも優れているのは炭で、これは99.99%の炭素の固まりであって、燃やしてしまわない限り、非常に安定しています。つまり、理想的な炭素の固定法です。だから炭を床下調湿炭や脱臭剤、土壌改良材に使うことは、税金で行っても良いと思います。
ここまで考えて、薪炭利用が盛んであった江戸時代の里山と町の関係は、町の資金が林を良くし、林の資源が町の生活を支える、循環型社会、低炭素社会、持続可能な社会として、ひとつの理想型であったと思いあたります。
間伐の進んだスギ林は林床に日が差し込んで、見違えるように清々しくなりますし、伐採間もない広葉樹林には、新芽を食べる動物が集まります。
そして、山菜やキノコ等の恵みをもたらしながら、美しい雑木林へと成長していきます。
こうしたサイクルを再び取り戻し、里山の環境を整備していく方法として、私たちは薪ストーブの普及を位置づけています。
里山に住む人々と都市に住んで自然な生活を希求する人々が、【東京薪市場】での交流を通じて、地球環境の保全への取り組みができれば―これがこのサイトを運営する私たちの願いです。