温室効果ガスとは、地表から放出される赤外線を吸収して大気を暖めて地球温暖化の原因になっているとされる気体のことで、メタンをはじめいろいろな種類がありますが、中でも二酸化炭素CO2は、私たちにもっともなじみがあり、また温室効果ガスの中で、温室効果そのものはメタン等に比べ低いものの、もっとも大量に発生する気体です。
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日本政府が国連で表明した「温室効果ガスを1990年比で2020年までに25%削減」の中期目標が大きな波紋を起こしましたが、温室効果ガスによる地球温暖化の防止は、現在全人類の大きなテーマになっています。
その大気中の濃度は現在0.038%と言われ、僅かな量のように思われますが、産業革命以前は0.028%であったと推計されており、人間の活動によって急激に増えつつあると言われています。
人間が燃料として使うエネルギーは、暖房にせよ動力源にせよ、ほとんどが個体や液体などの物質中に固定されている炭素を、酸素と化合させて空気中に放出される過程で生み出されます。つまり、燃焼や発酵などの酸化反応です。炭素が酸化する時発生する熱を利用しているわけです。
もっとも使いやすい燃料は、地中から掘り出される石油や石炭、天然ガスなど、動物や植物などの有機物質が長い年月で可燃性の強い炭素の化合物になった、いわゆる化石燃料です。
これらを燃焼させると、空気中に二酸化炭素を放出する見返りとして、大きなエネルギーを得ることができます。
産業革命後の人類の歴史は、さながら化石燃料の獲得合戦です。より多くの化石燃料を使えた国が、より豊かな国となりました。
問題は、地中から掘り出された、化石燃料中に含まれていた炭素、CO2として大気中に放出してしまった炭素を、再度固定し、物質中に閉じこめる有効な技術を、実は人類は持ち合わせていないということです。つまり化石燃料の使用は、そのまま一方的なCO2の増加を招きます。
そして残念ながら、ハイブリッドカーに代表される現在のエコ技術は、できるだけCO2の排出を少なくする技術であって、空気中のCO2を吸収する技術ではありません。
その点、自然は人間よりはるかに有能で、こうしている間も広大な海面は、着々とCO2を吸収してくれていますし、人間が自然の力を借りることで、誰でも簡単確実にCO2の削減に貢献できる方法があります。
それは、植物を育てることです。
植物は光合成により、CO2を体内に取り込みます。1トンの木には、500kgくらい炭素が閉じこめられています。
それでは、薪ストーブはせっかく植物が蓄えた炭素を、燃やしてCO2にしてしまうのだから、石油と同じじゃないか、と思えるかもしれません。
しかし、地球が2億年もかかって作った石油を人間がもう一度地中に戻すことはできませんが、木は手入れしてあげればすくすくと育ち、たちまち元の大きさに戻ります。
即ち、CO2を何度でも吸収し、何度でも固定してくれます。
森林のことについては「森林環境と薪」の項に詳しく書きますが、一度伐った木は、二度と元には戻らない、と考えている人がいます。
しかし、薪の材料となる広葉樹は、切株から芽を出して、たちまち再生していきます。
これを萌芽更新といいますが、伐ってから30年くらいまでがもっとも成長の割合が高い、つまり炭素を固定する効率が高いのです。
この力を利用し、人間が放出した炭素をもう一度森に吸収してもらう、そして出ていったものと返ってきたものを同じ量にして循環させる、この仕組みのことを「カーボンニュートラル」と言います。
そしてこれが、化石燃料中心のエネルギー体系を大転換させる、「カーボンオフセット」の中心になる概念なのです。
暖かいストーブ、よく燃える薪が、実はこれ以上大気中のCO2を増やさない、理想的な暖房なのです。薪ストーブの普及で森の手入れが広範囲に進めば、排出されるCO2より多くのCO2が森に吸収される、「カーボンポジティブ」の実現も夢ではありません。
東北大学大学院の新妻教授のお話では、薪ストーブ1台のCO2削減効果は、ハイブリッドカー5台分であるということです。薪ストーブユーザーは、特に意識しなくても、自然にカーボンオフセットに参加して、地球温暖化防止、低炭素の循環型社会の実現に貢献しているのです。